Mar. 4, 2005
「直観でわかる数学」(畑村洋太郎著、岩波書店)が売れているようです。個人的な話になって恐縮ですが、実は著者の畑村氏とは実家が近く、氏のご両親と私の祖父母の代から交流がある関係で、今でも何かとお世話になっているのですが(とはいうものの私が氏にお目にかかりお話したのは1回しかない)、今回数学の本を出されたということで、早速購入して読ませていただきました。
どうもこの本は一般には「学校での数学教育が悪かったために、数学がわからなくなる」と書かれてあって、そのために自分たちが数学が分からなくなったのは自分のせいではなく「教師が悪かったからだ」と書いてある(?)と理解されて、歓迎されているように思えるのです。少なくともいくつかの新聞の書評ではそのような表面的理解しかされていないように読めました。しかし考えても見て下さい。著者は東京大学の工学部の教授をつとめられ定年退官された履歴をお持ちで、理系であるのは勿論、一般の人よりも数学を使う機会ははるかに多い方なのです。つまり敢て礼を失する書き方を許していただくならば、数学をかなり「わかって」いらっしゃる。つまり私には、いくつかの例を除いて、「工学部における」数学教育の問題点についてかかれてあると読めたのです。勿論高校以下の数学教育にもしばしば同じ問題が潜んでいることは確かですが。
いささか専門的な話題になって恐縮ですが、工学部における数学教育には、数学を利用しようとする(エンジニア)側と、数学を数学として教えようとする側のせめぎ合い(軋轢、衝突と言ったら言い過ぎでしょうが、数学というものに対する考え方の違いがあるのは事実で、現場ではその「落とし所」を考える必要がある)が問題になり、私も悩んでいるのですが、この本はエンジニアの立場から見た数学と問題点(数学者側から見た数学との違い)がかなり高い見地からわかり、私にはとても有意義でした。そのような意味で貴重な本だと思います(ただし、数学的な誤解、誤りもいくつか見受けられます)。昨年の暮に私はこの本の感想をまとめて氏にお送りし、お返事もいただきました。

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