ヴィーンの「黄昏」
5月1日にヴィーン国立歌劇場でみた「神々の黄昏」の感想です。
指揮はS.ヤング、配役は、ジークフリートがC.フランツ、ブリュンヒルデがL.ガスティーン、ハーゲンがM.サルミネン。ヤングの指揮を見るのはサロメ以来10年ぶり2度目。この難曲を非常にしなやかに美しく表現していたのが印象的であった。決して「女性だから」というのではないのだろうが、カラヤンのDG録音の様な叙情性とも異なる美しい「黄昏」だった。特に1幕のハーゲンの見張り歌からブリュンヒルデのいる岩山に妹ヴァルトラウテが来るまでの間奏の木管アンサンブルの美しいこと。これは大きな発見であった。
平土間にいたため、オーケストラのメンバーの顔を見ることができず、確認できなかったが、少なからずヴィーンフィルハーモニーのメンバーが入っていたのではないかと想像するが(言うまでもなく、ヴィーンフィルハーモニーは国立歌劇場オーケストラの部分集合である)、オーケストラのうまさが大きく貢献していることはまちがいない。また美しいだけではなく、2幕後半の緊張感あふれる音楽もすばらしかったし、2幕終わり近くに出てくる朗々としたホルン(4本だったか)は惚れ惚れするほどだった。
C.フランツのジークフリートは一年前の東京リングの「黄昏」以来2度目。失礼ながら小太りで英雄らしくないのだが、それがかえって「お馬鹿な英雄」らしいのかもしれない。特に好きということはないが、嫌でもない。L.ガスティーンのブリュンヒルデはこの劇場のこの役での初めての登場とのことだが、最初の2重唱では今一つと思っていたものの、その後どんどん調子を上げて、「自己犠牲」は申し分がない。すばらしいソプラノだと思った。
しかしこの日の主役は何といってもM.サルミネンのハーゲン。すごみのある、そして深い音。1幕にこの人が出てくると、サッと舞台の雰囲気が変わったのだ。東京リングの長谷川顯もよかったが、サルミネンはすばらしかった。この日一番の拍手を浴びていたのも当然である。
9年前にみた時と同じ演出だったが、細部はかなり改良されこなれていて、違和感はかなり減っていた。1幕最後の岩山の場面で、ブリュンヒルデ(H.ベーレンス)に近づくジークフリート(S.イェルーザレム)が、岩山に降り積もった雪(?)に滑り尻餅をつくという、緊張感を台無しにする失態の原因になった「雪?泡?」も取り止めになっていたのは当然である。アルベリヒがフロックコートに山高帽で現れるのは同じであった。
発表された来シーズンにヤングの「指輪」はなく、当分この組み合わせの「黄昏」は聞くことができないようだ。その意味でも聞くことができたのは幸運であった。今まで三回見た「黄昏」の中では文句なく最高の演奏だったと思った。

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