Jan. 26, 2006
昨年末に京都に出張した折、京都駅で立ち寄った書店で「女教皇ヨハンナ」という本を見つけて手にとり、非常に興味を引かれました。9世紀の極端な女性蔑視のヨーロッパで、秀でた才能を持った女性が男装して「男」として生き、試練を越えてローマに出て時の教皇の侍医になり、さらに自身教皇になるという話で、ヨハンナという人は現在のローマ法王庁は認めていないものの、伝承が残っていて、実在の可能性もある女性だということです。
この本はその伝承などをもとにして作者が小説として書いたものですが、一人の男性ゲロルトとの「女」としての恋、それも少女時代から死ぬまでの時期を通したロマンスをからめていて、非常に魅力的な話になっています。この本を読んでいて気づいたのは、現在NHK総合テレビでも放映中の「宮廷女官チャングムの誓い」の主人公で、やはり実在の女性である長今(チャングム)との類似です。この人も苦難を乗り越えて王の侍医になるわけで、一人の男性ミン・ジョンホとの変わらぬ愛が描かれている点でも共通しています。
しかし、「チャングム」はしばしば「一人の宮廷女官のサクセスストーリー」と言われますが、実はそのように表面的で単純な話ではなく、2つのキーワード「師弟」と「母子」が軸の物語です。「師弟」については物語を御存知な方はすぐにお分かりだと思いますが、「母子」については、全五十数回の話が、先代の王の母子関係から話が始まり、帝王切開で終わることでも象徴されていますし、各所にさまざまな母子関係が描かれていることでわかります。すなわち、「チャングム」はかなりいろいろな糸が縦横に編み込まれた話なのです。対して、「ヨハンナ」はそれほど多くのキーワードは無いように感じました。ストーリーには共通点も多く、もしかすると「チャングム」台本作成の折に「ヨハンナ」が参考にされたのでは?とさえ思いました。
「ヨハンナ」も映画化されるとのことで、どのように描かれるか楽しみです。ほんとうはせいぜい数時間の映画ではなく、テレビドラマとして描いた方が面白くなるかもしれません。余談ですが、フルダの修道院長としてフラバヌス・マウルスが出てきますが、懐かしく思いました。この人は確か、「来たれ、創造主たる聖霊よ」を作詞した人です。マーラーの第8交響曲第一部の歌詞ですね。この本の中では悪役です。読書スピードの遅い私が珍しく10日ほどで一気に読んだ上下2分冊です。
「女教皇ヨハンナ」上・下 (ドナ・ウールフォーク・クロス著/阪田由美子訳)各税込 1,995 円、草思社

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