「武田 峯吉」のこと/Jan. 4, 2007
皆さんは戦後すぐの頃に活躍した、熊本の阿蘇山の麓、高森町の鳥類研究家、武田 峯吉をご存知でしょうか?彼は、地元の中学校の理科の先生をしながら、数十年にわたって鳥の研究を続け、その間に観察したことや感じたことなどをエッセーの形で全7巻にまとめたのです。私は熊本にいたときに熊本大学の資料館でこの本を見つけ、彼のことを初めて知りました。鳥が中心ですが、彼の観察の目は昆虫や植物はもちろん、さらに広く自然全般に向けられており、すばらしいものでした。
昭和30年頃に、たまたま熊本を訪れたドイツの日本文化研究家ハンス・ヴァーグナーが阿蘇観光の折に高森に立寄り、そこで武田と知り合い、彼のエッセーを読んだのです。そして深く感銘を受けた彼はドイツ帰国後にこれをドイツ語に翻訳して、ちょうど日本の岩波文庫に相当するような文庫本にして発売しました。これは鳥や東洋の文化に関心のある人だけではなく、広く読まれるようになりました。
そのうちドイツのバイエルン州の教科書にも取り入れられるに至り、現在では同州の人達の中で武田 峯吉と言えば誰でも知っている日本人というより、日本人の中でも最も有名な人の一人になったのです。でも残念ながら世界の鳥研究家の中で武田を知っている人はほとんどいませんし、日本国内でもそうですね。彼の研究したことは決して小さくない価値を持っていますが、ほとんど知られていません。
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とまあ、実は上の話はすべて私の創作なのですが、(日本では!)「昆虫記」で有名なファーブルについてはこれと似た状況だと考えればよいかと思います。フランスで彼の名を知っている人は、日本で武田 峯吉を知っている人(!)と同じくらい少ないようです。
このあたりの詳しい状況は前に御紹介した、高橋 敬一 著「昆虫にとってコンビニとは何か?」(朝日選書812/朝日新聞社)にも載っています。

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