« ロマンスカー | Main | 毎日栗拾い »

October 03, 2007

科学すること

今日はちょっとまじめなお話し。科学的か否かということは、数式や化学式を使えば科学的ということでもなければ、難しそうな科学の専門用語を使えばOKということでもないことは言うまでもありません。しかし、世の中の多くの人は自分が理解できないような科学的用語、原理や法則の名前を列挙されると、科学的だと思い、その主張を信じる傾向があるようです。五年くらい前にブームになった「マイナスイオン」もそうですし、その昔は「血液がアルカリや酸性になる」と言って騒がれたものです。

科学は、特に数学はその最たるものですが、結果の予想を立てただけではダメで、それを証明しなければなりません。あるいは客観的に説明し、根拠を述べ、相手を納得させなければならないのです。勿論結果の予想をたてることも重要で、観察結果や諸々の状況からこんなことが成り立っているのではないか?と予想をたてることは、それだけでも仕事の半分に匹敵するくらいの重みがあります。天才はここで凡人が考えつかないような結果や法則を予想することすらあるわけです。

しかし、いくら天才的な予想であっても、その理由・根拠を他人に説明して相手を納得させることができなければ、それは単なる推測・思いつき・絵空事・自己満足にすぎず、非科学的と言われてもしかたがありません。科学者の端くれだと思っている私は、何でもハスに構えて、なかなかすぐに信じようとしません。

最近「カマキリは大雪を知っていた」(酒井與喜夫著、2003年、農山漁村文化協会:税込¥1,571)という本を(途中までで降参)読んだのですが、まさにこんなことを思わずにはいられませんでした。

この本の主旨は、雪国のカマキリは来たるべき冬の積雪の深さを予知して、雪に埋没しないように卵(卵嚢)を産み付ける位置を決める、したがって、秋に産み付けられる卵の位置からその地方の積雪量を推測できる、というもの。正直言って皆目分かりませんでした。著者が何を考え、どんな予想をたてたのかは分かっても、どうしてそれが真実といえるのかサッパリ伝わらないのは私の理解力が無いせいだけではないと思います。出発点になっている「カマキリの卵は雪に埋もれるとダメージを受ける」ことを実験的に確かめようとしていないのも問題だと思います(実際、最近の結果では全くダメージはないそうです)が、このことはさておいても、たとえば・・・

著者自身「ここからはさらに推測の域をでませんが」と断っているにもかかわらず、推測・推量はさらに続いて、いつのまにか‘結論’にたどり着き、こんな‘驚くべき!’ことが分かったと宣言されるので、読者は戸惑うばかりです。

産卵の最盛期から90日で初雪になることが、なぜ雪の時期を察知していることになるのか、理解できませんでした。単に「秋に産んでいる」のとは違うのでしょうか。ツクツクボウシだって・・・と思いました。

いろいろ観察されて中には貴重な観察結果があると思いますし、すべてが無意味だと言うつもりはありません。証明も説明もされていない著者の予想や空想を本にしたと思えばよいのかもしれませんが、科学的結果としてみると非常に物足りなさを感じました。

どんな科学者でも間違いはあるもので、偉い数学者だってたまには証明に誤りを犯すことがあるものですが、だからといって間違いを頻発させたり、証明抜きで「これが真理だ」とすごんで見せても科学的だとは認められません。残念ながらこの本は納得できないことの連鎖が連綿と続いていて、私には理解ができませんでした。

怖いのは、この本を読んで理由は分からなくても納得してしまう人。そうか、こんなすごいことがこの研究で分かったんだと思われると・・・。

すみません、この本は途中でギブアップです。そのうち「ハチは台風を知っていた」という本も出るんでしょうか。

|

Comments

ぼくも、去年の昆虫学会で安藤喜一先生の講演を聴かなければ、知ることが無かった本だと思います。編集者も気が付かなかったんでしょうかねぇ?

Posted by: Ohrwurm | October 04, 2007 at 07:40 PM

いやぁ、読んでいて段々クラクラしてきました。ネットで検索すると、感動している人が多いようなのにも驚いています。
驚きの本を紹介していただき、有り難うございます(笑)。

Posted by: Zikade(家主) | October 04, 2007 at 11:22 AM

トラックバックありがとうございました。
 本音を言えば、ぼくもあの本を読んでいて、途中からはついていけなくなりました。「アマガエルは雨を知っていた」という程度の本なら、多少は科学的になりそうな気がします。

Posted by: Ohrwurm | October 03, 2007 at 11:21 PM

Post a comment